穴ぐらダイアリー

読んで字の如く。

30分

10月初めの頃に旅をして、その時偶然にも茶の湯に関する展示や出会いに恵まれた。

そんな事はまったく当初の目的にはなかったけれど、自分のなかで興味があるものとは、いつかタイミングが来たときに前触れなく出逢えるのかも知れない。


というわけで、帰ってから実家を訪ねた折に、「お茶の道具、何かない?」
と母に訊いてみた。
『なんでも買う前にまず訊いて!』が口癖だから。
なんと、物持ちのいい母は持っていた。正直驚いた。母が茶の湯の話をする事なんて一度もなかったから。なんでそんなものまで持ってんの⁉️
「昔、友達に誘われて行ったけど三回で辞めた」
ああ〜〜やっぱりそんなこったろうと😁😁😁



貰って来たのは、お茶を点てる為の最低限必要な道具三点だった。
一、抹茶茶碗
ニ、茶筅(抹茶と湯を攪拌するための道具)
三、茶杓(粉末状の抹茶をすくって茶碗に入れる道具)

まあ、三はティースプーンでも何でも代用できるのだが、茶道具解説によれば主に竹で出来ていて、自作したり銘をつけたりと、「茶杓は茶人の刀」と言うほど、茶人にとって重要な茶道具であるらしい。


ともあれ、この基本の三点を家にあるもので茶の湯セットにしつらえる。


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用途はないのに私は古いものが好きだった。解体するお家から貰ってきたり民芸品店等でちまちま集めてきた昭和の小道具類が、こんなふうに役立つ日が来るとは。

お正月の鏡餅十五夜のおだんごを飾る盆?に、並べてみるとアラまあ、なかなか格好が付くじゃないの👍


ちなみに、左まわりに説明すると、マグカップは茶碗をあっためた湯を捨てる入れ物。下に引いたのは茶碗の水滴など拭き取る布(ほんとは並べるものかも)。
赤い蓋物は、ずいぶん前に友達からプレゼントされたバターケース。柔らかくしたバターをぴっちり詰めて使うものらしいが、結局一度も詰めないままに抹茶入れになった。
アジアの染付け小皿に茶杓を乗せる。耳掻きを大きくしたようなスプーンがにわかに茶道具に見えてきた。
そして茶筅抹茶茶碗(母曰く、志野焼だとか)。
本来ならここにさらに清らかな水を入れた容器やら湯を沸かす釜などあるのだが、ポットに熱湯(抹茶の適温80度くらいに冷まして使う)を用意して、これでやってみることに。
点て方は動画が沢山あった。私みたいなにわか茶の湯を始めたい人は大勢いるようだ。



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いざ。
取り掛かる前に椅子に浅く腰掛けて背筋を伸ばし、深呼吸。言われているわけではないが、まずその心構えが大事かとはたと気づいた(この辺りからだんだん気合いが入ってきてる)。

心落ち着けたら茶碗にしずしずとポットの湯を注ぐ。温めると同時に、茶筅の先も浸す。柔らかくして、点てるうちに折れてしまわないようにする為だ(結論から言うとそれでも二本くらい折ってしまった😨)


お湯をカップに捨てて茶碗の水気を布で拭き取ると、お次は茶入から茶杓で抹茶をすくい、二杯か三杯ほど茶碗に入れる。
あとはいよいよ茶筅による初泡立ての実践だ。


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見た感じはそこそこ普通に出来ているようだが、飲んでみて思った最初の感想はと言うと、
「味がしない…」
いや、もちろんお茶の味はするんだけれど、旅先で飲んだ時のような甘み、旨味といった風味が全然引き出されていないのだった🤣🤣🤣

動画やサイト等の画像を見ると、ラテのような細かな泡がクリーミーにふんわりとのっている。
私のは泡が荒いし、やたら気泡が大きいのだ。

泡については流派により違うらしく、細かな泡で表面が覆い尽くされていないと駄目というわけじゃないと後から知り、ひとまず安心したけど…。


しかし手首のスナップを利かせてダマのないよう滑らかなお抹茶を点てるのは、見た目ほど楽じゃない。
動画を見る限りでは、どの人も表情すら微動だにせず点てておられるが、私は肩が上がって仕方なかった。余計な力が余計なところに入っているんだろう。

ちなみに立って点てるほうが力の入れ具合が調整しやすいと、何度か挑戦するうちに思ったが、立ったままお手前というのがそもそもあり得ないのかな😅



それはそうと、貰い物の寄せ集め道具と情報だけで、まずは見よう見まねでスタート出来たことは嬉しかった。
これで私もとりあえず、憧れの茶の湯デビュー。どこかで発表するでもなし、自分なりに美味しい風味のお茶を点てられるようになればいい!✨✨



一日30分、お湯を沸かし始めるところからがお茶の時間。すべてのやる用事も考え事もストップさせて、今日のしつらえを選び並べる。その為だけに全神経を集中させる。
気取って「精神(こころ)の凪の時間」とでも言おうかな。このメリハリが後から意識をすっきりさせてくれるのだ。
本も手に取らず、ただ自分の為にお茶を点てて一服を味わって、しばしぼんやりと放心する。

色々考えばかりが巡り、ただ座って瞑想するのが難しい私にとって、この習慣が毎日の瞑想になりつつある。