穴ぐらダイアリー

読んで字の如く。

迷子の子猫

この三日ほど前から、家の外で鳴いている。

「ミャア、ミャア」とまさに文字通りの鳴き声が、昼といわず夜中まで断続的に続く。

煩いというのではないが、ひたすら何かに向けて呼びかけるような声が、胸にこたえる。どこから来たのか、迷子の子猫のようだ。


この近所では、以前は猫の発情期の鳴き声や争う様子がよく聞こえていた時期もあった。しかしいつの間にか野良猫の声を聞くことはまったくなくなっていた。

そんなところでの、久しぶりのこの鳴き声。
いつも同じで、しかも一匹しかいないようだ。
何度か外に探しに出たが、声は聞こえど姿は見えず。


ところが昨日、かなり近いところで鳴いているので、まさかと思い自宅の階下に停めている私の軽バンを確かめてみた。
鍵を開けて中を探すが、さすがに居ない。車の下を覗いたが居ない。
逃げたかな、と身を起こしたらすぐ側でミャアと鳴いた。
ええ?どこに居るの?
地べたに頭を付けるようにして、底を懐中電灯で照らしてみたら、いたいた。


小さな顔が、エンジンなどが組み合わさったスペースから覗いてるのを発見。
思わず隙間から手を差し出したが、一瞬で姿は見えなくなった。
どうやら安全な場所だと思って入り込んでいたようだ。
しかし出られないでいるんだろうか?
顔の半分しか見てないから全体の大きさがわからない。
出られないとすれば大変だ。
でも猫は頭が入ればどこでも出入りできると聞いた事があるし………。


それで、一か八かエンジンをかけてみることにした。
稼働したら驚いて逃げ出すに違いない。もし出られないでいるなら、パニックで暴れるはずだ。
かけてみたが、反応なし。そろそろと前に出てみるが、鳴き声も暴れる気配もないので、無事出て行ったんだろう。
ミラーで何度も確認しながら、とりあえず車は別の場所に移動させた。


探しても居ないので部屋に入ってしばらくすると。
ミャア、
どこからともなく鳴き声が。

どうやらうちの家の近隣のあちこちに潜むことにしたようなのだ。
我が家の裏手は昔ながらの昭和民家で、隠居所らしく日頃人は住んでいないが、茂みや木の多い庭がある。その隣は夕方で閉まる託児所だ。
だから夜になればひと気もなく、車通りから一つ下がっているので、子猫にとっては身を隠すに安全な場所なのだろう。


それにしても、一匹だけ残された子猫。
母猫はしばらく乳を与えてから去ったんだろうか?
他の子猫はどうしたんだろう?
それともあの子猫のほうが、冒険に出かけてそのまま迷子になってしまったのかも知れない。
だとすれば、今ごろ母猫も悲しんでいるのでは?
人間のセンチメンタリズムでドラマ化するのもいやらしいが、どうみても完全に1人きりらしいあの猫が気になる。
今のところは、昼夜問わず鳴いて何かを呼んでいるような子猫がいつまでそうしていられるか、そして姿を現さない以上は、この状態で見守るしかなさそうだ。


でも、私は野良猫に餌をあげることはしない。
自分に責任が持てないのに、引き取らずに餌だけ置いて与えていたら、同じような子猫がまた増えてしまう。
もし目の前に現れて保護できたならば、その時に考えていることはある。


猫の声は夫も勿論聞いている。
「どこから来たのかなあ…」
私が言うと、
「犬のおまわりさんに訊くしかないw」
と即答されて笑った。
童謡のなかでも犬のお巡りさんは、泣いてばかりいる子猫ちゃんに、ワンワンワワンと困り果てていたが…。



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関係ないけど、妹から最近届いたラブリーなドラちゃん葉書。猫繋がりってことで。
初夏だねぇ。